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『オフサイド・ガールズ』 [映画(社会・世界)]

イラン映画と言えば子供を主役にしたものが多い。女性を主役に出来ない、恋愛モノはタブー・・というのが理由だが、結果的に癒しオーラで包まれた心温まる作品として印象を残すことが多い。本作『オフサイド・ガールズ』は、そんなイラン社会で生きる女性たちが日常においていかに抑圧されているかをユーモラスに描いた内容。監督は『白い風船』のジャファル・パナヒ監督。

イランでサッカーは国民的スポーツ。男性だけでなく、女性もサッカーファンだ。でも、女性がスタジアムで観戦することは禁止されている。とはいえ、今日は代表チームのドイツワールドカップ出場がかかった大事な試合。どうしてもスタジアムで見たい!そこで少女たちは男装してスタジアムに潜り込むが、あっさりとバレてしまい・・・。

従来のイラン映画のイメージを覆す・・というと大袈裟だが、女性がここまでワーワー騒ぎまくるイラン映画は初めて観た。どの子も生き生きと輝いている。場面展開はあまり多くなく、大きく分けてバス→スタジアム→バス(護送車)。特にスタジアムで彼女たちを拘束した兵士たちとのやりとりにはかなり長く時間をとっている。勿論、その間色々と起こり、トイレ一つ行くにもあり得ないほど大騒ぎ(女性用のトイレがないのだ)。囲いの中でお喋りを始めて隊長を困らせたりする。試合終了をラジオで知り、護送車の中で抱き合って喜ぶシーンから一気にラストへ。非常に気持ちのいい、それこそスポーツの後のような爽やかさに満ちた快作だった。しかし、その一方でイランの女性がいかに自由を剥奪されているか考えさせられる面も・・。
笑いを提供しながらもさり気なく社会問題を提起しているところが、ぬかりない。
少女たちの男装姿が見もの。

キーワード;
フェイスペイント、ワールドカップ、実況中継、トイレ、軍服、ラジオ、爆竹

OFFSIDE
2006年イラン
監督:ジャファル・パナヒ
出演:シマ・モバラク、サファル・サマンダール、シャイヤステ・イラニ、Mキェラバディ他

8月下旬、日比谷シャンテシネにて公開


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『それでも生きる子供たちへ』 [映画(社会・世界)]

異なる国の子供たちが、貧困や病と向き合いながらも逞しく生きていく姿を、7つの国の監督が7つのショートストーリーで描いたオムニバス。ユニセフ、WFP国連世界食料計画が企画から協力し、この映画の収益金も全額、同機関に寄付される。

ルワンダでゲリラ部隊に強制入隊させられた少年たちを描いたメディ・カレフ監督の『タンザ』。

セルビア・モンテネグロ。窃盗罪で少年院に入っていた少年が、出所後に窃盗団の長でもある父親に再び盗みを強要されるエミール・クストリッツァ監督の『ブルー・ジプシー』。

HIV感染者の両親を持った少女の苦悩を描くスパイク・リー監督の『アメリカのイエスの子ら』。

ブラジルで廃品を拾って自活する兄妹の日常を描くカティア・ルンド監督の『ビルーとジョアン』。

イギリス。戦地で受けたショックに悩むフォト・ジャーナリストの男性が、森の中で子供たちに誘われて幻の戦場へと旅をするジョーダン・スコット/リドリー・スコットの『ジョナサン』。

高級品を盗んではボスに交渉して稼ぐ貧民層の少年チロ。何のために盗みを繰り返すのか、それは子供ならではのささやかな夢のためだった・・・ステファノ・ヴィネルッソ監督の『チロ』。

路上で花を売り歩く孤児の少女と、裕福だが愛に飢えた少女の運命を描くジョン・ウー監督の『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』。

どれも非常に素晴らしい出来だが、とりわけ印象的だったのは、やはりユーモラスで笑いをも誘うクストリッツァ監督の『ブルー・ジプシー』、リドリー・スコットと娘のジョーダン・スコット共同監督による幻想的な『ジョナサン』、ラストを飾るジョン・ウーの、健気で愛くるしい少女の表情が涙を誘う『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』。

世界中で上映される映画こそ、世界を助ける有効な手段の一つになる。
この映画を観に行くだけで、もしかしたら病気の子供の薬が買えるかもしれない。

All the Invisible Children
2005年イタリア・フランス
監督:メディ・カレフ、エミール・クストリッツァ、スパイク・リー、カティア・ルンド、ジョーダン・スコット/リドリー・スコット、ステファノ・ヴィネルッソ、ジョン・ウー

初夏 渋谷シネマライズ他にて公開


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『モンゴリアン・ピンポン』 [映画(社会・世界)]


中国の若き新鋭監督、ニン・ハオが、ゆったりとしたテンポの中にちょっとしたおかしさを加えて作った癒しの映画

ある日、川に流れてきた白いボール。3人の少年たちは大人たちにそのボールが何なのか、大人たちに聞いてまわるが、モンゴルの遊牧民たちの間で、そのボールについて知っている者は誰も居ない。そのうち、少年たちは映像は映らず音声だけが流れるTVで、ボールが「卓球」というスポーツに使われるものだということを知る。アナウンサーが「卓球は国技。このボールは国家の球だです」と言ったことから、少年たちは「大変だ、北京まで球を返しに行こう」と言い出すが・・。

繰り返すが、映画のテンポは非常に遅い。眠くなるほど遅い。それでも、よく見ていると少年たちのやりとりに笑わされたり、可愛さが微笑ましかったり、色鮮やかな民族衣装にも眼を奪われる。広大な草原に暮らす遊牧民たち(実際にこの地に暮らす人を起用している)の価値観や生活など、あまりにもかけ離れた日常を送る我々には非常に興味深く、学ばされるものがある。子供時代に必ず経験する「これは何だろう?」という気持ち。その気持ちが呼び集める、様々な出来事。なくしてしまった大切な宝物に再び出会えたような映画だ。ついにボールの正体を知るラストシーンの演出がいい。

実は遊牧民に憧れている私。
羊飼いになりたいとの隠れ願望が・・。

緑草地
2005年中国(内モンゴル)
監督:ニン・ハオ
出演:フルツァビリゲ、ダワー、ゲリバン他

4月、シアターイメージフォーラムにて公開


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『約束の旅路』 [映画(社会・世界)]

世界各国の映画祭で大絶賛を浴びた感動作。エチオピアのユダヤ人をイスラエルに移送するという「モーセ作戦」をもとに、ユダヤ人と偽りながら生きるエチオピア人少年の波乱の生涯を描く。

1984年。「生きて」という母の言葉を背中に、スーダン難民キャンプを出てイスラエルに脱出した9歳の少年。エチオピア居住のユダヤ人だけに許された行動だった。以来、エチオピア人である彼はシュロモと名乗り、ユダヤ人だと偽って生きることになる。愛情豊かな養父母に育てられ、恋もするが、その間、肌の色や宗教による壁、差別など様々な迫害にあう。何より彼を苦しめたのは、真実を隠して生きていることと、生みの母に会いたいという願いだった。医師になるという夢を叶え、愛する女性と結婚もしたシュロモは、ついに妻に告白する・・・。

シュロモを演じるのは子役も含めた3人の俳優。3人とも可愛らしく凛々しく、特に最後の青年時代を演じるシラク・M・サバハは自身もシュロモと重なる体験をしている。都会に生きる我々は、あまりに世界のことを知らなさ過ぎる。祖国や家族との別れを体験し、人種を偽りながら生きる苦しみがいかに深いか、考えたことがあるだろうか。同じ地球に生まれながら、こんな体験をしている人々が今もどこかにいるのである。世界の混迷がますます深くなっていく今、この作品の説得力は大きく、人間としての尊厳や誇りを力強く訴える。加えて、地の繋がらない養母とシュロモの絆も感動的に描かれている。母を演じるイスラエルの大女優、ヤエル・アベカシスが素晴らしい存在感を示している(ファッションも素敵)。

キーワード;
難民キャンプ、ユダヤ教、左派、学校、赤い肌、湾岸戦争、祖国

Va,vis et deviens
2005年フランス
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
出演:ヤエル・アベカシス、ロシュ・ディ・ゼム、モシェ・アガザイ、モシェ・アベベ、シラク・M・サバハ他

3月10日より岩波ホールにて公開


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『明日、君がいない』 [映画(社会・世界)]

友人を自殺で失った後自らも自殺未遂をし、意識が戻ってすぐに書き上げられたのが本作の脚本(執筆時間はなんと36時間)。そして彼はその脚本をもとに2年の歳月をかけ、初めて映画を撮る(当時19歳)。そんなオーストラリアの新鋭ムラーリ・K・タルリ監督の思い入れが強い本作は、2006年度カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で上映されるや、20分ものスタンディングオベーションを巻き起こした。

ハイスクールに通う6人の男女。それぞれ、人には言えない悩みを抱え、ときにはその感情に押し潰されそうになる。2時37分、ついに1人の生徒が自ら命を絶つ・・。

衝撃的な展開があるのに、それだけ・・という言い方は相応しくないが、それだけの話だ。
カメラドキュメンタリーのように一人一人を追い、彼らの本音や心中はインタビューシーンという形で表現されている。
皆の悩みは、ちょっとやそっとじゃない問題で、誰が自殺してもおかしくない。
観る者は残酷な好奇心をかきたてられ、全員から眼が離せない。
ラストの自殺シーンは生々しくて正視できず・・・(涙)。
でも自殺の原因が今ひとつ分からない。
「あのこと」を知ったから?でも、だとしたら何故知っているの?

プレスにも書いてあったけれど、エンドロールで謝辞を捧げる中にガス・ヴァン・サントの名がある。彼の近作『エレファント』と本作は非常に似ている。ガス本人もこの作品を観ていて、後で「似た題材を扱っているが似ていないところが素晴らしい」と誉めたそうだが、作る側には異なっても観客が”似た印象”を持ってしまうのは避けられない。そういう意味では新鮮味は薄れ、損ではないのかなと思える。
しかし、揺れるティーンエイジャーの「親にも言えない悩み」を描いた監督の目は、実体験に重ねているからこそ説得力があり、リアルだ。
現在、長編2作目を製作中らしいので次回作が楽しみ。

キーワード;
木漏れ日ピアノトイレ、ゲイ、妊娠、マリファナ、兄妹、持病、ハサミ

2:37
2006年オーストラリア
監督・脚本:ムラーリ K. タルリ
出演: テレサ・パルマー、ジョエル・マッケンジー、クレメンティーヌ・メラー、チャールズ・ベアード、サム・ハリス、フランク・スウィート
 
(C) 2006 2.37 PTY


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『ラストキング・オブ・スコットランド』 [映画(社会・世界)]

ここ数日見応えのある映画が続く。
今日のこれは、1970年代のウガンダで独裁者として君臨したイディ・アミン大統領の人物像を、側近として仕えたスコットランド人青年医師の視点で描いたドラマティック・サスペンスだ。主演のフォレスト・ウィテカーは実際のアミン大統領に激似の上、妄想と狂気に取り付かれた非業な殺人者を熱演して数々の映画賞で主演男優賞を総なめにした。本年度のアカデミー主演男優賞にもノミネートされている。側近の青年医師を演じるのは『ナルニア国物語/第一章:ライオンと魔女』のフォーンのタムナスさん役で注目されたジェームズ・マカヴォイ。贅沢で幸福な生活を送っていたはずの青年がいつの間にか籠の小鳥となり、ついに”そのとき”を迎える恐怖をリアリティたっぷりに演じている。

スコットランド人医師のニコラスは医学校を卒業したばかり。理想に燃えてやってきた地はウガンダ。偶然、アミン大統領の怪我の手当てをした彼はアミンに気に入られ、主治医に任命される。アミンはニコラスに主治医以上の信頼を寄せ、何かと相談を持ちかける。ニコラスもアミンの気さくな人柄に惹かれていた。しかし、抵抗勢力の反撃に怯えるアミンは、少しでも疑いのある者は容赦なく殺し、全アジア人の追放を決定するなど独裁者の正体を露にしていく。ニコラスが気づいたときには時既に遅く、パスポートも取り上げられ、英国の外交官からも見放されていた。残る手段は彼自身の手でアミンを暗殺することだけ。それだけは・・と思った矢先、ニコラスの子を身篭った大統領の第二夫人が病院に運ばれたと情報が入る。その直後、彼女の運命を目の当たりにしたニコラスはついに覚悟を決めたのだが・・・。

ニコラスは架空の人物だが、アミンと交流のあった数人の欧米人をモデルに作られたキャラクターだという。実話であることがまず興味深く、一瞬たりとも目が離せない展開。政治家というのは強大な権力を手にしながら多くのものを失う。ときにそれは、自己さえも。アミンは孤独と恐怖に怯えて情までも失い、感情の赴くまま残忍に振舞うようになっていく。若い医師のニコラスの期待や希望、そしてそれが裏切られ恐怖のどん底に突き落とされる過程も見事に描かれ、特にハイジャック事件を背景に彼の運命が決定するラスト5分は、緊張のあまり震えが来るほど。暗殺計画を見破られた彼が受ける拷問は恐ろしくて見るに耐えない(普通は、その後すぐ歩けるわけないのだが・・)。

俳優たちの熱演に実話の迫力。アミン大統領が政治的に何をしたのかより、敢えて人間性に着目した本作、個人的にかなり推したい。ジェームズ・マカヴォイに関しては、タムナスさんの可愛らしいイメージが強い人にはショッキングなシーンが多いかも(ベッドシーンもあったり・・w でもやっぱり拷問シーンか)。優男風の風貌なのに、フォレスト・ウィテカーの迫力に負けない熱演を見せている。今後の注目株。

キーワード;
Tシャツ、第二夫人、オボテ派、死刑、パスポート、妊娠、頭痛薬、空港、ハイジャック

THE LAST KING OF SCOTLAND
2006年アメリカ
監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:フォレスト・ウィテカー、ジェームズ・マカヴォイ、ケリー・ワシントン、サイモン・マクバーニー、ジリアン・アンダーソン他

4月公開

参考文献ならこちら↓

アミン大統領 (1977年)

アミン大統領 (1977年)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 朝日イブニングニュース社
  • 発売日: 1977/12
  • メディア: -


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『ツォツィ』 [映画(社会・世界)]

2006年のアカデミー賞で、アフリカ映画初の外国映画賞受賞の快挙を成し遂げた話題作がようやく日本で公開される。元南アフリカ大統領のネルソン・マンデラも、本作の監督、出演者に対面した際、「自分もかつてはツォツィ(不良、チンピラの意)だった」と語ったという。スラム街に住む”ツォツィ”と呼ばれる一人の少年が小さな命と出会ったことで、それまでの怒りや憎しみから解放されていく感動作だ。

南アフリカ最大の都市ヨハネスブルク。その最大の旧黒人居住区ソウェトのスラム街にツォツィと呼ばれる少年が居る。彼は仲間と共に暴力的で無軌道な生活を送り、窃盗やカージャックを繰り返しては怒りを糧に生きてきた。そんな彼が、ある裕福な家庭の車を盗む。車の主である黒人女性を撃ち、猛スピードで逃げるツォツィ。後部座席から赤ん坊の泣き声が聞こえたのはその直後だった・・・。

劇中、当然暴力的なシーンは多いが、赤ん坊の愛らしさに癒される。
結局、ツォツィは赤ん坊を連れ帰り、仲間にばれないようこっそりと世話をする。しかし、慣れないツォツィにとっては困惑することばかり。同じ居住区に住むシングルマザーを脅して(!)乳をやるよう命令し、彼女に一時的に預けたりして何とか乗り切る。映画では、ツォツィがこのシングルマザーや浮浪者の男性に出会って彼らの境遇を知るエピソードもあり、憎悪や悲しみの中で生きているのは自分だけでないことも知る。赤ん坊という、弱くて小さなものに対して溢れ出る優しさは、人間の本能的な感情だ。ツォツィはそれを失ってはいなかった。「生きること」の価値を見つめなおした少年は、ついに赤ん坊を返しに行く。ラストに用意された緊張と胸を揺さぶる感動は、多くの映画を観てきた人にとっても忘れられないシーンとなるだろう。

ストーリーだけ見ても充分に引き込まれるが、アパルトヘイトが終演して10年経つ南アフリカの現状をリアルに描いた点にも注目したい。我々日本人から見たら全く世界が違うが、現地ではツォツィのような人を身近に知る人が殆どだという。貧困やエイズ、治安など、今なお南アフリカが抱える深刻な問題にも迫っている。
ツォツィを演じるのは舞台でキャリアを積んだ新星プレスリー・チュエニヤハエ。圧倒的な存在感でツォツィの心情を表現し、高い評価を得た。

キーワード;
殺人、BMW、強盗、銃、赤ん坊、コンデンスミルク、紙袋、モビール、新聞紙、犬、土管、パトカー

TSOTSI
2005年イギリス・アフリカ
監督:ギャヴィン・フッド
出演:プレスリー・チュエニヤハエ、テリー・ペート、ケネス・ンコースィ、モツズィ・マッハーノ他

4月、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他にて公開


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『パラダイス・ナウ』 [映画(社会・世界)]

パレスチナ人監督とイスラエル人プロデューサーが組み、自爆テロ攻撃に向かう二人の若者の48時間を描いた本作は、ゴールデングローブ賞を受賞し、第78回アカデミー賞外国語映画部門にノミネートされた。しかしアカデミー賞授賞式直前、自爆攻撃で亡くなった人のイスラエルの遺族たちがノミネート中止を求める運動を起こしたり、映画の内容が自爆攻撃者に同情的という見方もあって様々な波紋を呼んだ問題作でもある。

イスラエル占領地のヨルダン川西海岸地区の町ナブルス。ここに住む幼馴染のサイードとハーレドは自動車修理工として働いてはいるが、未来も希望もなく、貧しい家族の生活を助けるために出来ることもない。占領下で生まれ育ったという運命の呪縛から逃れようがないのだ。ある日、サイードは自爆志願者を募るパレスチナ人組織の交渉代表者に「君とハーレドはテルアビブで自爆攻撃を遂行することになる」と告げられる。入念に準備を整え、いざ実行に向かう二人。しかし途中で計画が狂い、サイードとハーレドは離れ離れになってしまう・・。

物語は、サイードの心の葛藤、そして自爆テロの使命を抱きながらも次第にサイードや彼の恋人の考えを理解していくハーレドに追っていく。テロを遂行する若者たちは特別な存在でも何でもなく、ごく平凡な労働者で、愛する家族にも恵まれている。それなのに何故死を選ぼうとするのか。理解しようとしても永遠に答えは出ないかもしれない。ただこの映画は、テロという残虐な行為を何故正当化できるのか、彼ら(テロリストたち)にはどんな言い分があるのかという、正義や人道という単純な疑問から生まれた(映画では、何故か宗教的な観点には触れていない)。最後のシーンは観客の判断に委ねられているが、悲しみに満ちている。

キーワード;
車、恋人、水タバコ、母、スーツ結婚式、爆弾、バス

PARADISE NOW
2005年フランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ
監督:ハニ・アブ・アサド
出演:カイス・ナシフ、アリ・スリマン、ルブナ・アザバル他

3月10日より東京都写真美術館、渋谷UPLINKにて公開


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『ルワンダの涙』 [映画(社会・世界)]

1994年にルワンダで大虐殺があったことを知らない日本人は多いと思う。今年公開された『ホテル・ルワンダ』でその事実を知った、という人もいるかもしれない。何しろ、日本では外国(特にアメリカ以外)で起きていることに関心がない。『ホテル・ルワンダ』でさえ日本での公開が当初は未定で、mixiで集めた署名が公開を決めたというのだから。

でも、関心があるない以前に、この大虐殺については多くの西側諸国が目も口も閉ざしていた。本作の製作者で原案の共同執筆者であるデヴィッド・ベルトンは、ルワンダ事件の当時、BBCの報道記者として虐殺事件を取材するために現地に渡り、ツチ族とフツ族の血で血を洗う殺戮を目のあたりにしてきた。そのときに出会ったボスニア人の神父(後に何者かに殺害される)に助けられた経験が映画化を決意させた。本作は、白人の目から見たルワンダ大虐殺を伝える悲劇のドラマである。

ルワンダ共和国の首都キガリ。英国ローマン・カトリック教会クリストファー神父が運営する公立技術学校も青年協力隊のイギリス人青年ジョーが赴任した。フツ族とツチ族の対立の歴史を刻んできたこの地には常に国連の平和維持軍が駐留しているが、ジョーの明るさと人懐っこさは生徒の人気を集め、楽しく穏やかな日々を過ごしていた。しかし、ある日大統領の乗った飛行機が墜落したという報告が入り、クーデターではとの噂が広まる。学校の前には多くのツチ族が避難に集まり、殺伐とした空気が漂う。そして、フツ族によるツチ族一掃計画が始まった・・。

本作には、フツ族とツチ族のナタを使った原始的な手法による残虐な殺し合いの他、国連軍がヨーロッパ人だけを救助して立ち去っていくという、別な意味での残酷な場面もある。結局、自らを犠牲にして彼らを守るのは神父だけ。この映画は、人間の弱さや政府の無力さをも描いている。事実、国連軍が去った数時間後から更に虐殺はエスカレートし、この年の春から初夏にかけて国民の10人に1人、少なくとも80万人が虐殺された。ルワンダはこのとき、見捨てられていた。これは、世界が犯した最大の罪である。

確かに、歴史的事実として順序だてて語られているけれど、映画としてのドラマ性は意外と薄い。名優ジョン・ハートが演じるクリストファー神父という核になる人物が居るのに、人々の絆に深みがない。神父とジョー、ジョーとツチ族の少女、現地の友人たちの友情など、もっと内面的な部分に迫ればもっと感動するものに仕上がったかもしれない。神父の人間性が充分すぎるほど描かれているだけに、他の人物の印象が薄くて結果的にバランスが取れておらず、残念に思える。

とはいっても、この映画の最大の功績は他にある。実は、実際に虐殺で親や兄弟を殺されたり、命からがら助かった人たちがスタッフとして参加しているのだ。トラウマを抱えた彼らに配慮しながらの撮影は大変だったに違いないが、この事実から目を背けず、あのとき自分たちを見捨てた世界に訴えたいとの思いが彼らにはあったのだろう。世界の平和を訴える本気度が他の映画とは明らかに違うのである。

キーワード;
マラソン、ツチ族、フツ族、なた、国連、教会、赤ん坊、犬、薬

SHOOTING DOGS
2006年イギリス・ドイツ
監督:マイケル・ケイトン=ジョーンズ
出演:ジョン・ハート、ジュー・ダンシー、ドミニク・ホロウィッツ、クレア=ホープ・アシティ他

新春第二弾公開予定


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『麦の穂をゆらす風』 [映画(社会・世界)]

今年のカンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞したケン・ローチ監督の新作。独立を求め、イギリスと長きにわたる対立の歴史を刻んできたアイルランドをテーマにした本作は、上映後に10分以上ものスタンディングオベーション、審査員は全員一致で選んだという。

1920年、イギリス支配下のアイルランド。兄テディと共に独立運動に身を投じる医師志望の青年ダミアン。英軍に仲間を虐殺され、テディも拷問を受け、耐え難い屈辱的な仕打ちに怒りを募らせる日々を送っている。やがてイギリス・アイルランド条約が交わされ英軍は撤退していくが、今度は条約に反対する者と賛成する者同士で内戦が起きる。ダミアンとテディも意見が分かれ、兄弟の絆は引き裂かれていく・・。

一瞬たりとも気を抜けない緊張感の持続。ここまで引き込まれた映画は久しぶり。まるで自分や自分の家族のことのように、痛ましさが伝わってくる。愛し合う者が憎しみ、殺し合わねばならない悲劇を、ケン・ローチは、同時テロ後悪化の一途を辿る世界情勢へ訴えるように、非常に力強く描いている。人生とは、愛国心とは何だろうと思った。愛する者を残して、自分の強靭な意思を曲げず国のために散っていく若者たち。最も残酷な形で幕を閉じるこの作品が最高賞に選ばれた事実を、今も世界のどこかで続く殺戮が終わるよう祈りながら受け止めたい。ダミアンを演じるのはキリアン・マーフィー。『28日後・・・』のイメージが強かったが、最近演技派としての幅の広さを見せつける作品に多く出演している、今後の注目株。

リーアム・二ーソン(好きw)の代表作『マイケルコリンズ』と併せて観るのもおススメ。

キーワード;
ブラック・アンド・タンズ、ウィリアム・ブレイク、マイケル・コリンズ、イギリス・アイルランド条約、北アイルランド問題

The Wind That Shakes The Barley
2006年アイルランド・イギリス・ドイツ・イタリア・スペイン
監督:ケン・ローチ
出演:キリアン・マーフィー、ボードリック・ディレー二ー、リーアム・カニンガム他

11月、シネカノン有楽町、渋谷シネ・アミューズにて公開


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