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『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』 [映画(家族)]

もはや説明不要のベストセラー、リリー・フランキーの自伝的小説の映画化。彼が亡き母への思いを綴った、真っ直ぐな親子愛の物語だ。脚本はリリーと同世代の松尾スズキが手がけ、キャストも”ボク”役のオダギリジョー、”オカン”役の樹木希林、若い頃のオカンに内田也哉子が出演する他、この物語を愛する実に多彩な俳優たちが”チョイ役”も含め顔を揃えている。

1960年代、ボクは3歳。自由気ままな生活を送る父のもとを離れ、オカンとボクは小倉を出て筑豊のオカンの実家に来た。オカンはボクを女手一つで育てたのだ。大分美術学校に入学したボクは一人で下宿生活を送り、東京の美大に合格すると更に自堕落な生活になっていった。進路も特に決めずにダラダラと月日だけが過ぎていき、やがてオカンがガンの手術を受けたことを知った。ボクはオカンを東京に呼び、二人の生活が始まった―。

上映時間は2時間22分。ちょっとだけ長く感じた。
見たところ、”ボク”は一人っ子らしい。幼少時の家庭環境やその後まで、とにかく”オカンと2人で生きてきた”感覚が強いのだろう。愛情は勿論だけれど、苦労をかけたという多少の負い目もあったのかもしれない。私の家庭環境とは大分違うけど、うちも自由業の父親で生活は不規則、母親と一緒に過ごす時間が必然的に多い。そして私も一人っ子であり、この辺りはかなり共感した。

でも、後半はオカンがガンになってからの闘病の描写が多くなる。これが辛い。抗がん剤に苦しむ姿、日に日に衰弱していく様子は樹木希林の熱演によるところも大きいが、ショックなほど辛いシーンが続く。現在、家族が闘病中だったり、病院で肉親を亡くした人はハッキリ言って観ない方がいい、トラウマになる。

全体的にとても愛情に満ちていてる内容だが、後半が気の毒すぎて、闘病の印象の方が強い映画になってしまっている(しかも病院にまで電話で原稿の催促をしてくる編集者が居たり・・人生はそんなものだけれど)。

内田也哉子は思ったより良くなかった。日頃、いい仕事をしているなー・・と羨望の目で見ているのだけど、女優には向いていないかも。オダギリジョーがとてもいい。オカンの葬式シーンは本人も撮影前に充分に気持ちを整えて臨んだらしく、喋れないほど号泣する姿に胸を締め付けられる。そして樹木希林も捨て身の熱演。

リリー・フランキー氏はとても優しい人なんだろうな。

キーワード;
炭鉱の町、温泉場、ぬか漬け、かくし芸、東京タワー、パンとブドウ、雪

2007年日本
監督:松岡錠司
脚本:松尾スズキ
出演:オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、松たか子、小林薫他

4月GW全国公開

(C)2007「東京タワー~o.b.t.o.」製作委員会

「東京タワー」原作はこちらで買えます。


東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~


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『ボルベール<帰郷>』 [映画(家族)]

スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督の最新作。個人的には彼の作品に対しては、巷で騒がれるほど心惹かれないものが多かったのだが、今回は違った。「死」を通して回帰する、帰郷という名の希望。ユーモラスでちょっと恐くて、感動的な母娘の物語だ。主演のペネロペ・クルスは本作でカンヌ映画祭最優秀女優賞を受賞、アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされた。

15歳の娘を持つライムンダは、分かり合えないまま母親を火事で亡くしていた。そんな彼女に2つの死が訪れる。
1・娘が「本当の親じゃないから」と迫ってきた父親を殺害(空き家になった隣のレストランにひとまず死体を隠すライムンダ)。
2・その夜、彼女の伯母が亡くなる。
一方、ライムンダの姉のソーラは、近所の人たちが死んだはずの母親を見たと噂しているのを耳にする。動揺する彼女の前に、ついにその幽霊(?)が現れ、そのまま2人は共に生活を始めるが、ソーレは妹のライムンダに母の存在を伝えられず・・・。

ペネロペ・クルスはハリウッドで綺麗なだけのヒロインを演じるよりも、大地に生きる強い女性がやっぱり似合う(たくましさを強調するため、本作では”つけ尻”を使用)。もともと演技力のある女優だし、彼女の魅力が生きるのは故郷スペインの映画だ。本作でも気性の激しいライムンダという女性を生き生きと演じている。成り行きでレストランを継ぐことになったライムンダが輝くような笑顔で料理を振舞う場面、パーティでタンゴの名曲”ボルベール”を歌う場面も見所。戸惑いながら母親と暮らすソーラの心情、ユーモラスでチャーミングな母親、映画の前半で起きる殺人など、ストーリー的に飽きさせない展開である上、キャラクター描写もきめ細かい。

この映画には様々な女性が登場する。母、2人の娘、孫娘、伯母、隣人。それぞれが何かしら秘密や問題を抱えているが、特にラストで明らかになる母親とライムンダの秘密は衝撃的な内容。しかし、常に母親の愛を求めてきたライムンダにとっては、母と再び出会い、話が出来ることが無上の喜びとなる。死が永遠であること、そして常に傍にあること。アルモドバルが長年問いかけてようやく到達した、彼自身の答えと言える映画だ。

キーワード;
火事、冷凍庫、死体、母、レストラン、霊、美容室、秘密

VOLVER
2006年スペイン
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ヨアンナ・コバ、ブランカ・ポルティージョ

6月全国公開


※ロシア語版のポスターを貼ってみましたw


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『こわれゆく世界の中で』 [映画(家族)]

アンソニー・ミンゲラ監督の最新作。ジュード・ロウはミンゲラ監督作品三度目の主演となる。
対照的な2人の女性の間で揺れる一人の男の心情を”真実の愛とは何か”をテーマに叙情的に描いていく。

ロンドンのキングス・クロス開発地区でプロジェクトを担う建築家ウィル。彼は10年連れ添う恋人リヴと彼女の娘ビーと暮らしている。しかし、リヴは精神的に不安定なビーへの罪悪感からウィルに心を閉ざしていた。そんなある日、ウィルのオフィスで盗難事件が発生し、ウィルは犯人の少年を追いかける。その先で出会った女性との間に起きる出来事が、すべての崩壊の始まりだった・・。

一言で言えば、すべてウィルが悪い!大体、彼が何をしようとしているのか分からない。崩壊の引き金となる出来事も、よく考えれば本人にも充分想像のつく行為で観ていて何となく不自然。リヴもそれほどウィルを拒んでいるようには見えないし、ビーの心の病も描写不足。彼ら家族の心の距離がそれほど深刻には見えないのだ(だからこそ、ウィルの浮気がより軽薄に感じられてしまう)。よく描けていたのはジュリエット・ビノシュ(嫌いだけど)演じるボスニア人女性。彼女の女としての顔と母としての顔、両方の間で自ら苦しむ様と母親としての強さは、最近貫禄が出てきたビノシュには適役だったと思う。
リヴ役のロビン・ライト・ペンも可憐で美しかった。
少年グループが屋根を飛び越えて逃走するシーンやちょい役で出演の一風変わった娼婦など意外な見所もあるが、個人的には面白いと思えない作品だったのが残念。

キーワード;
パソコン、体操教室、民族紛争、デジタルカメラ、仕立て屋、ピアノ、娼婦

Breaking and Entering
2006年イギリス
監督:アンソニー・ミンゲラ
出演:ジュード・ロウ、ジュリエット・ビノシュ、ロビン・ライト・ペン他

4月GW、日比谷シャンテシネ、Bunkamraル・シネマにて公開


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『ママの遺したラヴソング』 [映画(家族)]


2004年作品なので撮影時は2~3年ほど前になる。スカーレットヨハンソンが出演を熱望したという本作で、彼女はゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされている。対するジョン・トラヴォルタはこれまでのイメージを一新させるような繊細な演技を披露。女性監督シェイ二ー・ゲイベルによる、誰もが優しい気持ちになれる愛情に満ち溢れた物語である。

フロリダで倦怠生活を送るパーシーに、長年会っていなかった母の訃報が届く。ニューオーリンズの実家に帰った彼女を待ち受けていたのは、母の友人である二人の男、元文学部教授のボビーと作家志望の青年ローソンだった。遺言では3人に家が遺されているため、彼らの奇妙な同居生活が始まる。生意気なパーシーはボビーとそりが合わず、しかしローソンには惹かれていく。刺々しさがなくなり少しずつ優しくなっていくパーシーは、ある日、母が自分に宛てた手紙を発見。そこには運命を変える驚くべき事実が書かれていた・・。

物語の内容は、正直言って簡単に先が読めてしまう展開。しかし、何と言ってもキャスティングで成功している。スカーレット・ヨハンソンは恐らく撮影当時20歳くらいだろうが、若くて瑞々しい、これくらいの色気でちょうどいい(今はセクシー路線突っ走りすぎて返って将来が不安・・(--; )。ジョン・トラヴォルタの演技も新たな発見。演技派もいける!でもしっかりダンスシーンもあるからトラヴォルタ!この人、年とるほど良くなっていく役者かも。ローソンを演じるのはオーディションで選ばれた新人ゲイブリエル・マック。本作での大役でこの先大きな期待がかかる。撮影場所はニューオーリンズなのだろうか。だとしたら洪水の被害にあう前ということになる。カメラが美しく、映画を彩るもう一つの注目点は、文学部教授だったボビーが会話の端々で引用する名著の一文。フロストやジョルジュ・サンドの名言が心に残る演出で、文学好きにはちょっと嬉しい。原作者の息子であるブルース界の新星グレイソン・キャップスが手がけた、オリジナルを含むサウンドトラックも印象深い。

キーワード;
家、母親、居住権、X線技師、ギター、腎臓病、ライブハウス、雑草、心の傷、酒、大学、手紙、父親

A LOVE SONG FOR BOBBY LONG
2004年アメリカ
監督:シェイ二ー・ゲイベル
出演:スカーレット・ヨハンソン、ジョン・トラヴォルタ、ゲイブリエル・マック、デボラ・カーラ・アンガー他

2007年春、シネスイッチ銀座にて公開


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『無花果の顔』 [映画(家族)]

桃井かおりの監督作だと聞いて、普通の映画じゃないだろうとは思っていたが・・。「時刊MOMOI KAORI」に連載していた数本の小説をもとに自ら脚本を執筆したという本作、一応テーマは「普通の家庭」。普通の家庭に起きる、特別でも何でもないけど”事件”と言える出来事の数々。家出、別れ、引越し、再婚、出産・・。人生の節目で心の繫がりを再認識する平凡な家族の物語を、独創性溢れる映像で描き出す。主演は本作が初の映画主演作となる山田花子で、プロ・アマ問わずに集まった5千人の一般公募の中から選ばれた。

庭に花の咲かない無花果の花がある門脇家。4人家族のこの家で、彼らは温かい夕食を囲んでいる。ある日、工務店に務める父が家を出る。理由は、他人の手抜き工事の後始末を徹夜でするために一時的にウィークリーマンションを借りたというのものだった。ようやく仕事が終わって久しぶりに帰宅した父を迎え、陽気に笑う母。しかし、間もなく父は突然倒れ、帰らぬ人となってしまう。母と娘は新しいアパートで新生活を始める。母は勤め先の居酒屋の主人と再婚、娘は何となく交際していた男との子供を妊娠、何となく出産する・・・。

まずこの家庭、どう見ても普通の家族じゃない。桃井かおり演じる母親が一番普通じゃない。もともと個性的な性格である上に、夫の死で平静を失ったため、本来どういう設定のキャラクターなのか掴みどころがなくなってしまっている。彼女の服装や門脇家のインテリア(赤い冷蔵庫とか)など、ポップでカラフルな映像に”意図的なもの”を感じる。だから余計に普通には見えないのである。それでも、物語はそれなりにドラマチックである。なるほど・・桃井監督の目指すテーマが分かるような気もするが、全体的に非常に寂しく、家族の誰もが幸せな表情をしていない。それで、いいんだろうか。強烈な印象を残す作品であることは確かだけれど。

キーワード;無花果の木、塩辛、コロッケ、葬式、黄色いスカート、工事現場、東京タワー

2006年日本
監督:桃井かおり
出演:桃井かおり、山田花子、石倉三郎、高橋克美、岩松了、光石研他

正月第二弾、シネマスクエアとうきゅう他にて公開


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『酒井家のしあわせ』 [映画(家族)]

友近とユースケ・サンタマリアが夫婦役!豪華キャストで贈る、笑いと涙のファミリームービー。29歳の新鋭女性監督・呉美保はデビューとなる本作で、サンダンスNHK国際映像作家賞2005日本部門をを受賞。更に、音楽は幅広い世代から支持を受ける山崎まさよしが手がけ、涼しげだけどどこか温かい、”酒井家”を象徴するようなメロディーを提供している。

ごく平凡な家庭の酒井家は、父・正和と母・照美、息子・次雄(兄)と娘・光(妹)の4人家族。ただし、照美は再婚で、前の夫を長男と共に交通事故で亡くした過去を持つ。次雄は前夫との間に出来た次男で、正和との子は光である。中二の次雄は反抗期真っ盛り。こんな、ちょっと訳ありな家族をうっとおしく感じ始め、学校でもせっかく言い寄ってくる女の子にすら素直に心を開けない有様。ある日、正和が突然家を出て行くと言い出す。その理由は「好きな人が出来たから」。その相手とは・・なんと女ではなく、家族皆が親しくしている、正和の友人だった・・・。

家庭崩壊をテーマにしているわけではないと思うが、少なくとも一旦は、この酒井家は崩壊する。なんとなく、先日観たばかりの『イカとクジラ』と比べてしまうのだが、あんな風に乾いた笑いはここにはなく、普通に笑っていいところで笑える、素直なユーモアに溢れている。全体のトーンは決して明るくない。じゃあ暗いのかと言ったらそうではなく、何か胸がきゅんとなるような切なさがあるのだ。次雄の視点で語られる物語なので、この世代の子供が抱く”大人はわかってくれない”的感情が様々なエピソードに反映され、このあたりの心理的なディティールがよく描けている。特に、次雄を演じる子役が驚異的に上手いのだ。正和が家出した真の理由は映画の後半で明らかにされるが、この泣けてくるほどの不器用さを優しく包み込むように映画は幕を閉じる。なんとなく、日本人らしさを感じた作品。色合いも綺麗だった。個人的には、誕生日プレゼントの中身を見たかった気がするが。

キーワード;
金魚鉢、初恋、誕生日プレゼント、アイスキャンディー、卒業アルバム、天神祭、病院、自転車、失恋

2006年日本
監督:呉美保
出演:友近、ユースケ・サンタマリア、森田直幸、三浦誠己、谷村美月、濱田マリ、赤井英和、本上まなみ、高知東生他

12月、渋谷アミューズCQNにて公開


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『幸福(しあわせ)のスイッチ 』 [映画(家族)]

インディーズ映画界で数々の賞に輝き、脱サラOL監督として注目されている新人、安田真奈監督による心温まる家族の物語。舞台は和歌山県田辺市。”お客様第一””儲けは二の次”をモットーに電器店を営む父と、そんな父の生き方に反発する娘・・性格の違う3人姉妹と父親、そして町の人々の絆を優しく見つめる感動作だ。本作の構想は10年。家電メーカーで働いていた監督自身の経験を元に、綿密な取材と実体験で映画化を実現させた。主演は今最も期待される若手女優、上野樹里で、終始不機嫌な3人姉妹の真ん中を、豊かな表現力で演じている。

デザインメーカーに勤める新人イラストレーターの怜は、田舎の電器店でお人よしのような仕事ばかり続けている父に反発して上京。しかし、東京での仕事は自分の理想と違い、上司と衝突した挙句に会社を辞めてしまう。そんな折、父が怪我をし、姉も妊娠中のため、怜は人手不足になった電器店を手伝うことになる。怜の不機嫌は頂点に・・悪態をついては、姉と妹になだめられる始末。しかし、父の仕事ぶりが地元の人々に深く愛されていることを知った怜は、一番大切なことや家族の絆の有難さを感じ始める・・。

上野樹里の仏頂面が次第に柔らかくなっていくところが見ていて嬉しい。雷の夜、病院を抜け出た父と一緒に家々を回って修理をする場面で見せる涙は、見ているこちらも胸にこみあげてくるものがある。落ち着いてて母のような存在の姉に本上まなみ。今どきの女子高生然とした妹に新人の中村静香。それぞれ個性的な3姉妹。そして、娘たちには態度の悪い頑固親父だけど、何よりお客様を大事にする誠実な父親に沢田研二。電器店が近所のオジサンたちの寄り合い所になっているところも楽しい。安田監督自身が脚本を手がけているが、キャラクター描写といい、非常によく出来ている。田辺市の素朴な風景や田辺弁も映画の温かみに一役買っている。

因みに、私は物持ちが良くて、壊れても新しい物をすぐ買わずに修理して使い続ける方だ。この電器店の父親も同じ。商品を売らずにサービスで修理ばかりしてるから、儲からない。しかし、それが正しいことが映画を観ていると分かる。人の心も同じ。愛着のわいたものに簡単に見切りをつけていいのだろうか。傷ついたら、直してやれるところは直してやりたい。ずっと傍に置いておきたいから。

キーワード;
イナデン、デストロイヤー、幼馴染、餅つき機、料理教室、雷

2006年日本
監督:安田真奈
出演:上野樹里、本上まなみ、沢田研二、中村静香他

10月。テアトル新宿にて公開


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『地下鉄(メトロ)に乗って』 [映画(家族)]

(少々ネタバレあり。楽しみを奪うほどじゃありません)
すごい・・何故にこんなに混んでいるのか・・一度行って満席だったので今日は30分前に行ってやっと入れた。この様子では超話題作なのですね。吉川英治文学新人賞受賞作の浅田次郎著の同名小説、出版から10年目にして初の映画化である。監督は『月とキャベツ』の篠原哲雄。いつもの地下鉄の出口の外が、ある日突然昭和39年に変わっていた。これは、タイムスリップを通して親子の絆や男女の愛を描いた人生のドラマだ。

私は地下鉄が好きで、JRにはできれば乗りたくないほど。地下鉄には、何となく温かみがある。闇の中に突如現れる光と賑わいが不思議さと共に安心感を与えてくれる。闇を夜空と思えば、地下鉄は銀河鉄道だ。だから、私は地下鉄の一番前で運転手と同じ目線になるのが好きだ。だから、今までありそうでなかった地下鉄をテーマにした日本映画が誕生してちょっと嬉しかった。

小さな会社の経営マンとして働く真次は家に帰るため、いつものように地下鉄を降りて出口に向かった。歩きながら携帯電話の留守録を聞くと、父親が倒れたという弟からのメッセージが入っている。真次の父は巨大な企業を一代で築き、入院ニュースで報じられるほどの人物だが、家では横柄だった。少年時代、兄が父と喧嘩して飛び出した直後に事故死したこともあり、真次は父を嫌っていた。地下鉄の出口から地上に出た真次は思わず目を疑う。そこには、昭和39年の東京の風景が広がっていた。その日以来、彼は眠るとタイムスリップを繰り返し、若き日の父に出会い、行動を共にするようになる。そして、真次の恋人みち子も同じ体験をし、二人は過去の世界で互いの関係について衝撃的な事実を知る・・。

真次を演じるのは堤真一。恋人みち子に岡本綾。真次の父に大沢たかお、その恋人お時に常盤貴子の豪華メンバー。
結論から言うと面白い。この先どうなるのか?という好奇心でぐいぐいと引き込まれていく。真次の父親と真次が似ていることも(妻が居ながら愛人がいる)、後でその理由がちゃんと用意されている。よく出来た物語だと思う。

でも・・ラストでみち子が決断する究極の選択が解せない。私の理解を超えているだけなのか?どうして彼女は自分の存在を否定したのか?彼女が主人公で、それまで彼女の目線で描かれてきたストーリーならともかく、いきなりあの決断は突飛過ぎるのでは?(このシーンを受け入れられるかどうかで、この映画を好きかどうかに関わってくる重要な場面ということに)。それから、父親がどうやって成り上がったのかこれだけではよく分からないが、それは問題にしなくていいのか。ただ若き日の父に会って、これまで見ることのなかった父の知られざる内面を見ただけで真次は気が変わったのか。兄が死んだときに遺体安置所に家族以外の唯一の人物として中学の先生がいるのは何故か。長男の本当の父は誰なのか・・・・・などなど。一応、突っ込みどころはそれなりにある。でも、最も大切なテーマ・・許すことの美しさが涙を誘うことは必至。しかも、堤真一と大沢たかおがとてもいい演技を見せてくれる。地下鉄の車体や駅を当時のように再現したセットも見所。地下鉄マニアには見逃せない。

キーワード;
地下鉄、東京オリンピック、オムライス、ケチャップ、闇市、東京帝大、青山一丁目、満州

(C)2006 METRO ASSOCIATES

2006年日本
監督:篠原哲雄
出演:堤真一、岡本綾、大沢たかお、常盤貴子、田中泯、吉行和子他

公式サイト
www.metro-movie.jp

10月21日より丸の内ピカデリー他にて公開

※なんだかんだ言って長文になってしまった・・。


地下鉄に乗って


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『イカとクジラ』 [映画(家族)]

本年度のアカデミー賞脚本賞ノミネートをはじめ、全米の名誉ある映画賞に輝いた『イカとクジラ』。その不思議なタイトルがあまりにも頻繁に受賞リストに名を連ねたため、一躍注目された話題作だ。

1986年、NY、ブルックリン。16歳のウォルト(兄)と12歳のフランク(弟)は、目の前にいる、共に作家である両親にショッキングな事実を突きつけられる。「離婚?!」。その日から兄弟は、父と母の家を行ったり来たりの日常を送るようになる。平静を装いながらも実は傷ついていた二人は、それぞれ学校で問題を起こしてしまう。そして両親もまた子供たち以上に悩んでいた。ママは浮気し放題、パパは教え子の女の子といいムード。一体この家はどうなってしまうの?!

監督&脚本は『ライフアクアティック』でウェス・アンダーソン監督と共同脚本を手がけた新鋭ノア・バームバック。自身の少年時代に基づいて作られたという本作は、家庭崩壊をテーマに、リアルでユーモアに溢れた独特の雰囲気のコメディに仕上がっている。また、映画や文学やロックへの愛が詰まった作品でもある。シェイクスピアの『マクベス』に登場する台詞「綺麗は汚い、汚いは綺麗」じゃないけど、悲劇は喜劇、正反対のものは紙一重なんだなあと思わずに居られないようなエピソードが集まっている。子供たちの戸惑いは当然のことながら、親の迷いぶりは子供より始末に負えない。傷ついた心を癒す独自の解決法(?)を知った弟、ピンク・フロイドの名曲をパクってコンテストに優勝してしまう兄・・本当は誰も悪くないのに、普通に考えたらこの状態はかなりヤバイ。10代の子供を持つ親の世代は40~50代(まだまだ男・女盛り)、他人事じゃないと思う人が多いかも。でも、典型的なアメリカ人の家庭を反映したこの映画の舞台設定は80年代。なんと・・今と殆ど進化していないではないか(笑)。ちょっぴり悲しい笑いを織り込みながら映画は展開し、ラストで、長男の心に強い印象を残す”あるもの”が登場する。これが、幸福の神様だったらいいのに・・。

父親にジェフ・ダニエルズ。母親にローラ・リ二ー。長男ウォルトを演じるのは『ヴィレッジ』のジェス・アイゼンバーグ。次男フランク役はケヴィン・クラインとフィービー・ケイツの息子オーウェン・クラインで、今最も期待されてる子役である。キャスティングも完璧で、映画のリアリティを一層盛り上げている。

しかし、NYの自然史博物館は私も訪れたことがあるけど、あんなものあったっけ?

キーワード;
離婚、ディケンズ、猫、カフカ、フィッツジェラルド、『ママと娼婦』、浮気、マスターベーション、『ブルーベルベット』、ビール、ピンク・フロイド、NY自然史博物館、イカとクジラ、「最低だ」from『勝手にしやがれ』

THE SQUID AND THE WHALE
2005年アメリカ
監督:ノア・バームバック
出演:ジェフ・ダニエルズ、ローラ・リ二ー、ジェス・アイゼンバーグ、オーウェン・クライン、ウィリアム・ボールドウィン他

12月、新宿武蔵野館にて公開


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『サラバンド』 [映画(家族)]

今年88歳になるイングマール・ベルイマンの、『ファニーアレクサンドル』以来20年ぶりの新作にして(まだ生きてたの?なんて言う人もいそうだが・・)、恐らく遺作になるであろう作品。夫婦の崩壊をテーマにした『ある結婚の風景』(74年)の続編とも言える本作は、静けさの中に煮えたぎるような激しい感情の交叉が描かれる。

かつて夫婦だったマリアンとヨハンは、離婚後30年目で再び生活を共にし始める。一方、ヨハンの近くで暮らす彼の息子ヘンリックと娘のカーリン。妻を亡くしてから、ヘンリックはカーリンに対して偏執的な愛情を抱くようになっていた。音楽学校を目指してチェロの練習をするカーリンにエゴイスティックな指導をする父ヘンリック。カーリンはその激しさに耐え切れず、初対面のマリアンに怒りと不安をぶつける。そこには、父と息子の間に存在する50年間もの憎悪、父が娘に抱く異形の愛が渦巻いていた・・。

10章に分けられたエピソードで、登場人物たちは殆ど座って会話をするだけの穏やかなシーンが多い。音を消して観ていたら何とも穏やかで静かな映画だと思うだろう。しかし、その内容は泥沼化した親子の感情、家庭内の地獄絵巻なのだ。何となく『カルネ』を思い出してしまったが、この父親の娘への愛は明らかに異常で、就寝時も同じベッドで寝ており、第8章の”サラバンド”ではもっと顕著なシーンもある。彼-ヘンリックはまた、自分の父ヨハンを激しく憎み、ヨハンも息子であるヘンリックを許せずに居る。それでいて彼らは鏡で映し合ったかのように似ているのである。すべてを見てきたマリアンは、ラストで物言わぬ自分の娘に「初めて触れる」(この娘のことはそれまで語られない)。それは魂の浄化、真実の愛の姿だ。男の弱さと女の強さ、親子間の目に見えぬ感情・・生きていく上で決して避けて通れないテーマを、ベルイマンは老いた目の集大成とも言える傑作に仕上げた。タイトルの”サラバンド”は17~18世紀にヨーロッパの宮廷で普及した古典舞曲のことで、映画ではバッハの無伴奏チェロ組曲第五番のサラバンドが使われている。彼らの関係を象徴するかのようなテーマが響く。

キーワード;
写真、チェロ、バッハ、手紙、家族

SARABAND
2003年スウェーデン
監督:イングマール・ベルイマン
出演:リヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソン、ボリエ・アールステット、ユーリア・ダフヴェ二ウス、グンネル・フレッド

10月中旬、ユーロスペースにてロードショー

(C)SVT 2006. All Rights Reserved


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